直葬

      アクティブ・シニアのための
           生き生きセカンドライフのすすめ
   (平成21年4月21日 読売新聞/くらし・家庭欄)

死後に通夜や告別式を行わず、遺体を火葬するだけの「直葬(ちょくそう)」が広がっている。以前は身よりのない人などを対象にした福祉的なサービスだったが、今や一般化してきた。直葬を積極的に請け負う業者も増えている。
 
「自分の両親と義理の両親を見送ってきたが、葬式はこりごり。自分にふさわしく、納得のいく形を考えたら直葬という結論になりました」
 
都内在住の主婦(58)は話す。大金がかかった義母の葬儀。あいさつ回りが大変だった母の葬儀。義父の葬儀では、800人もの会葬者が集まったが、大半は夫や夫の兄弟の会社関係者だった。
 
主婦は63歳の夫と二人暮らし。子どもはいない。経済的な余裕がないわけではないが、葬儀に金をかけるよりも、現在かかわっている社会貢献活動へ寄付したい。
 
夫はもちろん、兄弟、親類にも自分の考えを伝えたうえで、死後、直葬にして遺灰を桜の木の下に埋めてもらうというシンプルな内容の生前契約を、都内のNPO法人と結ぶことにした。
 
「人生のどこに価値を置くかの問題で、同じように考える人は少なくないはず」と、主婦は話す。
 
直葬とは、通夜や告別式などを行わず、自宅や病院などからそのまま遺体を火葬場に送り、火葬にすること。ひつぎ代や搬送費、業者の人件費程度ですませられるから、費用は安い。
 
「家族のための現代葬儀大辞典」などの著書がある日本葬祭アカデミー代表の二村(ふたむら)祐輔さんによると、直葬は、身よりがない人のために以前から行われてきた。
 
しかし、この3、4年で、葬送のひとつのスタイルとして考えられるようになり、家族の有無や経済状況にかかわらず死後に直葬されることを望む人が増加している。「遺族の中にも、直葬を望む声は多い。今では、都市部では2〜3割が直葬」という。
 
神奈川こすもす(川崎市)は今年2月、直葬専用のプラン「火葬のダビアス」を始めた。専用施設での遺体安置やリムジン車での搬送などを含めて、最も安い費用で17万7825円。火葬後の散骨や納骨堂利用などの相談にものる。
 
佐藤葬祭(東京都世田谷区)の直葬プランは、軽食や写真、ひつぎに入れる生花代などを含めて約29万円。7年ほど前にプランを設定して以降、利用者は増加傾向で、年間扱う葬儀の約4割が直葬だ。佐藤信顕社長は「決して心がこもっていないわけではない。人々の価値観が多様化していることの表れ」と話す。
 
ただ、通夜や葬儀を省き、故人との別れの時間が少ない直葬の場合、残された遺族が心の整理をつけられないこともあるようだ。二村さんは「儀式を無価値と切り捨てるのは疑問。儀礼を通じて安心感を得たり、けじめをつけたりできるということも忘れないでほしい」と話している。
 

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